発達障害のあるお子さんが通う放課後等デイサービスの選び方

増加する放課後等デイサービス

学校・家庭に次いで、発達障害のあるお子さんが過ごす第3の居場所として、最近その存在感を増しつつある「放課後等デイサービス」。今回は、その間違いない選び方についてお伝えします。

「放課後等デイサービス」は、障害のある小学生から高校生までのお子さんが放課後や長期休み中に通う場所です。費用の9割を行政が負担してくれるため、親御さんにかかる金銭的負担は1日900円程度で済むという、中々に恵まれた制度です。

事業所をどうやって見つけるか

まず、自分が住む地域にどんな放課後等デイサービスがあるのかを調べる必要があります。

学校の先生や教育相談所は、地域にどんな放課後等デイサービスがあるか、知らない場合が多いということです。放課後等デイサービスは「教育」ではなく「福祉」の管轄であり、しかも成立から日が浅い制度なので、教育関係者に情報が行き渡っていないことが多いのです。

確実に情報を持っているのは、在住している市区町村庁の子育て支援課、または福祉事務所です。まずはこちらに相談してみるのが良いでしょう。

もちろん、インターネットも有効です。自身が住む市区町村以外の放デイにも通うことができますから、「自身が住む+隣接する市区町村名」と「放課後等デイサービス」で検索をかけて、調べてみると良いでしょう。

しかし、各事業所の評判について、最も確度が高いのは親御さん同士の口コミだと思います。お住まいの地域で親の会などがあれば、入会して情報交換するのも有益です。

「お預かり」か「療育」か

さて、いくつかの事業所が候補に挙がったら、実際に見学や体験を行い、通う事業所を決定していきます。

その際覚えておいていただきたいことがあります。

大都市圏を中心に急速に増加しつつある放課後等デイサービスですが、その増加には大きくわけて二つのトレンド(流行)があります。

一つは「お預かり→療育」への流れ。

従来の放デイは、特定のカリキュラムなどを設けず、スタッフの見守りのもと、子どもが教室に備え付けてある遊具で自由に遊んだり、DVDをみたり、おやつを食べたりする形が自由でした。療育施設というより、学童に近い形です。

それが最近になり、「もっと専門的な療育をしてほしい」という親御さんの要望に応える形で、特色ある療育プログラムを打ち出す事業所が増えています。最近特に多いのは運動・スポーツ系で、他にコミュニケーション系(SSTなど)、パソコン、お絵かき、ものづくりなど、様々です。

二つ目は「知的な遅れのない子の利用増加」というトレンドです。

従来、放課後等デイサービスを利用するお子さんの多くは、特別支援学校または特別支援学級在籍し、知的障害を伴っていましたが最近になって、通常級在籍の知的な遅れのないお子さんも放デイを利用することが多くなってきました。

一番重要な「レベル感のすり合わせ」

放課後等デイサービスが、お預かりから療育重視となり、知的な遅れのない子の利用が増加する中、最も重視していただきたいことが「レベル感のすり合わせ」です。

具体的には、事業所に通ってきている子たちのレベルが、自分のお子さんのレベルとマッチしているかを見極める必要があります。

放課後等デイサービスの対象となるのは、知的な遅れのあるお子さんから平均より高い知能を持つお子さんまで。また年齢は小学生から高校生と極めて幅広いです。事業者側から見ると、これだけ幅広い発達段階のお子さんにオールレンジで対応できるプログラムを提供するのは至難の業です。

実際、多数の放デイが活動している都心部では、「高機能の子はこことここ、重めの子はこっち」といった感じで住み分けが進んでいます。提供するプログラムのレベルが違う事業所同士で、それぞれのレベルに合うお子さんを紹介しあうことまでなされているようです。

しかし、事業所によっては、開所直後だったりPRがうまく行っていないなどの理由で、お子さんの発達段階に対処するノウハウを持っていないにもかかわらず、利用を勧めてくることもあるかもしれません。その勧めにのってミスマッチな療育を受けさせてしまうと、療育効果が見込めなかったり、お子さんが孤立して苦しい思いをすることになりかねません。

そうならないよう、事前の見学で事業所が主なターゲットにしている利用者層をチェックする必要があります。

チェックの方法として、スタッフに

「利用している子どもの中で、特別支援学級・学校にいる子と、通常級にいる子の割合はどれくらいですか?」

「通っているお子さんの主な年齢層を教えてください」

と質問することは、その事業所のレベル感を把握する上で有益です。

自身のお子さんが特別支援学校に在籍しているのに事業所を利用するお子さんの多くは通常級に在籍していたり、高校生のお子さんを通わせたいが事業所を利用しているのは主に小学校低学年のお子さんであったりすることがあるかもしれません。

ただし、その事業所を利用しているお子さんの発達段階と、自分のお子さんの発達段階にズレがあるからといって、その事業所に通わせるのがよくないわけではありません。このようなときは、発達段階や年齢のズレにどんな対応をしてもらえるのか聞いてみるとよいでしょう。細やかな対応を提案できるようなら、力のある事業所だと言え、充分通わせる価値があるとおもいます。

いずれにしても、利用するなら、その事業所がお子さんの発達段階にあわせた関わりをしてくれる、という印象は得ておきたいところです。

指導員の力量は?

放デイのサービスの質を決定づけるのは、指導員の力量です。

しばしば指導員の資格や経歴を気にされる親御さんがいますが、あまり重要な要素ではありません。というのも、放デイの事業所の多くは設立から日が浅く、指導員は療育以外の分野からコンバートしてきている場合が多いからです。

たとえば、精神保健福祉士を持っているからといって、その人が「発達障害児療育の専門家」であるとは限りません。3ヶ月前まで成人の精神障害者の生活介護に関わっていた人かもしれないのです。

発達障害のあるお子さんと関わるスタッフの力量は、お子さんの発達段階に合わせた課題や遊びの引き出しをどれくらい多く持っているかで推し量ることができます。

そこを確かめるために、お子さんの発達段階や困り感を伝えた上で

「うちの子が取り組めそうな課題は、どんなものがありますか」

と聞いてみるのがよいでしょう。

お子さんのレベルにあった課題のアイデアや教材がスッと出てくれば、力のある療育者だといえると思います。

放課後等デイサービスを有効に活用するために

冒頭にも書きましたが、放課後等デイサービスは、学校と家庭に次ぐ、第3の居場所として、発達障害のあるお子さんに育ちに大きな影響をもつ場所です。

しかし、ここ数年で新規開所が相次ぎ、サービスの質が事業所によって玉石混交であるとの話も聞かれます。お子さんの健やかな育ちのために、間違いのない事業所を選んでいただきたいとおもいます。

 

 

 

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