言葉のないお子さんへの療育
私達はお子さんを教育するとき、もっぱら言葉に頼っています。しかし言葉をまだ獲得していないお子さんの療育では言葉が使えず、経験の浅い指導者は戸惑うことになります。
たとえば、言葉を獲得していない子に指導者が「こうしなさいって言ったでしょ。どうしてできないの?」などと言葉で問いかけているのをよく目にします。その子が言葉は理解できないと頭ではわかっていても、いざ指導するとなると言葉で伝える以外の方法をしらないので、そこに頼らざるを得ないのです。
お子さんの目線に注目する
こうした時、指導者には「お子さんの目線に注目しましょう」とアドバイスしています。こちらの指示がお子さんに通っているかどうかは、お子さんの目線が示してくれるからです。
よくあるのは、指導者が指をさして指示する際、指導者の注目が、お子さんの目線ではなく、自分が指示した指先に置かれてしまっているケースです。その結果、お子さんがそっぽを向いて指示を見ていないのに、指導者はそこに気づけていないという状況がおきます。
本来であれば、指導者は指示を出しながら、お子さんの目線に注目する必要があります。お子さんの目線が自分が指示した先にしっかり向いているかどうかを確認するのです。
目線が外れているときはどうするか
では、指示をだしてもお子さんがそっぽを向いて注目してくれないときはどうすればよいのでしょう。お子さんの顔に手をあてがって直接目線を動かす流派もありますが、お子さんが嫌がることが多いので私は使っていません。
私の場合は、対象物にお子さんの目線を向ける代わり、注目してもらいたい対象物(例:机上に置かれたカード)を、お子さんの目線の先に持って行きます。
お子さんが対象物に注目したのを確認したら、今度はそれを本来の位置(机上)にゆっくり戻します。このとき指導者の注目は、当然お子さんの目線に注がれなければなりません。対象物が移動するに従い、お子さんの目線もまた正しい位置に戻ってくるかどうかを確認します。
それでもお子さんの注目が得られないとなれば、その場のテクニックでどうにかなる問題ではなく、課題設定・環境設定から見直さなければなりません。
上の例でいえば、お子さんがカードにちっとも興味を持っていない、もしくは興味が教室内の別のところに向いているのです。または、指導者との信頼関係が充分築けていない可能性もあります。原因を見つけて、そこににあわせた対策を行う必要があります。
座る位置も大切
指導者が常にお子さんの目線に注目できるためには、座る位置も重要です。
一対一の指導では、下の写真のようにお子さんが机に座っている位置の側面、または対面に座ります。
しばしば、指導者がお子さんのま隣または斜め後ろに座り、両者が同じ方向を向いて療育している場合がありますが、その位置関係では指導者がお子さんの目線を確認するのに顔を大きく横に動かさないとならず、大変なので指導者がお子さんの目線に注目しなくなる原因となり、望ましくありません。
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