相手への理解を深めるゲーム
今回ご紹介する「かたろーぐ」は、身の回りにあるカタログを使って「好きなものランキング」を作成し、それを他に人に当ててもらうというゲームで、子どもたちがお互いへの理解を深めるのに最適です。
こうしたゲームを療育に導入すると、子ども同士の関係性が深まり、和やかで居心地のよい空間が生まれます。
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「かたろーぐ」には様々な遊び方がありますが、ここでは集団で遊ぶルールを紹介します。
一人のプレイヤーが、カタログの中から7つの品目を選び、石でできたマーカーをおきます。それらの品目を好きな順にランキングした上で、各品目に対応するマークが描かれたカードをランキング順に伏せて並べます。
他のプレイヤーは、1位がどの品目であるかを当てます。当てた人は、きれいなハート型のトークンがもらえます。2位以降も同じやり方を繰り返していき、最後にこのトークンを一番多く集めた人が優勝です。
無限の発展性
「かたろーぐ」では、身の周りにあるものをなんでもランキングにできるため、無限の発展性があります。以下にその例を挙げてみます。
発達障害のある子の人間関係が拡げるきっかけに
「かたろーぐ」を使うことで、子ども同士が相手の好みを知り、お互いを理解し合うきっかけを作り出すことができます。
たとえば、自閉症のあるお子さんで、他者への関心が薄く、電車や飛行機の図鑑ばかり見ている子がいました。そのお子さんに、「かたろーぐ」をつかって他の子との関係作りを試みたことがあります。
その子(A君とします)が、図鑑を拡げて大好きなジャンボジェットの写真を眺めていました。そこで「A君、ちょっとゲームをしてみよう。この中で一番好きな旅客機から順番にこれ置いてみて」とマーカーを渡しました。
ジャンボジェットというのは、エアバスもボーイングもみんな同じような形をしていて、素人目には目立った違いはないように見えるのですが、A君は躊躇なくマーカーを置いていきます。彼の中にはハッキリとした好みの序列があるのです。
ランキングができあがったところでほかのお子さんを呼びました。呼ばれてきた子どもたちは、A君がランキングしたジャンボジェット機の写真をみて「大体どれも同じにみえるけど・・・」と困惑気味。まずはあてずっぽうで1位を当てさせました。その結果、みんなが予想した最新型の機体はハズレ。Aくんが選んだのは旧型の機体でした。
「この旅客機はどうして一番好きなの?」と聞くと、「搭乗口の形がカッコいいから。」とA君。子どもたちから「うわーそんなところ見るんだ」「言われてみればカッコいいかも・・・」などと感想が漏れました。
2位を当てる際、子どもたちは前回の失敗を教訓に、搭乗口を気にしながらA君の好きそうな機体を選びました。ところがまたもやハズレ。「この旅客機が2番めに好きな理由はなに?」と聞かれたA君、今度は「尾翼がカッコいい。」と答えました。「うわーそっちかー!」とみんな大爆笑でした。
「他者理解」のプロセスを構造化できる
「かたろーぐ」を療育ツールとしてみると、「他者を理解する」というプロセスを構造化した点が大変画期的です。
A君のジャンボジェット機に細やかで独特な興味は、そのままでは他の子と共有するのが難しかったでしょう。しかし、「かたろーぐ」という構造化されたゲームを通じて、ほかの子と楽しみながらその価値観を共有することができました。
とはいえ、指導はこれで終わりではありません。「今度はBちゃん、君の好きなプリキュアでかたろーぐやってみようか」と別の子を誘ってみました。今度はA君が他者の好みを当てる番です。
プリキュアは実は歴代で40人以上おり、ジャンボジェット機以上に判別が難しいのです(笑)。それでもお題を出す側で一度ゲームを経験しているAくんは見通しがついて安心できたのか、Bちゃんがどのプリキュア好きか自分なりに考えてプレイできていました。
自閉症で他者との関係が薄かったA君にとって、「かたろーぐ」をプレイした経験が、自分の価値観を他者に理解してもらう体験となり、加えて他者の価値観を理解するよいトレーニングになりました。
様々な遊び方を試してみよう
「かたろーぐ」は、福井県のインディーズゲームブランド「ちゃがちゃがゲームズ」さんが制作されています。発達障害のあるお子さんのプレイも積極的に推奨されています。ウェブサイトには、特別支援級での実践や、ご自宅で障害のあるお子さんとプレイした様子も記載されていますので、ぜひ一度ご覧になることをおすすめします。
ちゃがちゃがゲームズ
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