認知能力とは
認知能力とは、人間がどのように物事をどのように受け取り、理解するかを示す能力のことです。
認知能力は子どもから大人になる過程で段階的に発達していきます。ところが、知的障害や発達障害のあるお子さんは、この認知能力の発達が遅れていることがあり、そのことは、コミュニケーションや身辺自立、学習など、生活全般に影響を与えます。
アナログゲーム療育の大きな目的の一つは、お子さんの認知能力の発達を促すことにあります。認知発達段階の引き上げが、アナログゲーム療育の究極の目標であるコミュニケーション能力の向上を目指す上で重要になるからです。
これから数回にわたって、アナログゲームを使って認知能力をどう発達させていくか、説明していきます。
今回はその前段階として、認知発達のキー概念である「シンボル機能」について説明します。
認知発達のキー概念「シンボル機能」
シンボルとは、ある具体的な事象を、別のもので代表したもので、シンボル機能はシンボルを使いこなす機能のことを指します。シンボルの代表例が、「名前」です。
この二つの画像をみてください。どちらも「トラ」であることはすぐにわかるでしょう。しかし、左側のトラは、四本足で歩いています。右側のトラは二本足で立っており、手に葉っぱを持っています。そもそも、実写とイラストですから、質感や色味が全然違います。
こうもかけ離れた特徴を持つ二つの映像をみて、なぜ私たちは同じ「トラ」であると認識できるのでしょうか。よくよく考えてみると不思議ではありませんか。
実は、私達人間は、こうした異なるものを「トラ」という名前で呼ぶことで、同一であると認識しています。この「トラ」という名前が、シンボルにあたります。
子どもがシンボル機能を獲得し、物に名前があることを認識するのは、2歳前後であり、これは言葉を発し始める時期と重なっています。
ここからもう少し成長すると、例えば、色や物理的形状が全く異なるトラとカモメが、どちらも「動物」というカテゴリに属することも、理解されるようになってきます。
「動物」もまたシンボルの一種です。「動物」という名前の生き物はこの世に存在しません。しかし、私たちはトラやカモメやその他の生き物を「動物」という”架空の入れ物(シンボル)”に入れて整理しています。
それによって、あるシンボルと別のシンボルを組み合わせて、例えば「動物と植物の違いはなにか」といったふうな、高次の思考を展開できるようになるのです。
ゲームの「ルール」もシンボルの一種
ゲームについてはどうでしょうか。ゲームを構成する要素である「ルール」もまた、シンボルの一種です。プレイヤーたちは目にみえないシンボルである「ルール」を共有しあうことで、ゲームを楽しむことができます。
たとえば、以前ご紹介した「スティッキー」は、シンボル機能が芽生えていない2歳以下のお子さんにとっては、「三色の棒をリングで束ねただけの物体」にすぎません。
ゲームの参加者たちが、この物体に「一本ずつ順番に棒を抜いていく。タワーが倒れたら負け」というルールが当てはめることで、初めてゲームとして成立するのです。
このことからもわかるように、ゲームをルールを理解するにはお子さんにシンボル機能が形成されていることが最低条件になります。加えて、シンボル機能はコミュニケーションの重要な条件でもあります。
次回以降、このシンボル機能がアナログゲーム療育の中でどう関係してくるのか、各発達段階ごとに説明していきます。
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