互いの距離を縮める 「ディクシット」

今回ご紹介する「Dixit(ディクシット)」は、フランスで生まれ、世界で150万個以上売れているベストセラーゲームです。

少し前、SMAPの木村拓哉さんのお気に入りとしてTVで紹介され話題になったので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

幻想的なカード、可愛らしいうさぎのコマ、外箱を転用した立体的な盤面。美しいコンポーネントが魅力的。

幻想的なカード、可愛らしいうさぎのコマ、外箱を転用した立体的な盤面。美しいコンポーネントが魅力的。

ルールは前回ご紹介したヒットマンガに似ています。

明確な主題を持たない抽象的な絵が描かれたカードが、各プレイヤーごと6枚ずつ配られます。話し手となるプレイヤーが、手元のカードから1枚選び、描かれた絵を元に「お話」を考えます。「お話」は登場人物のセリフでも、状況の説明でも、ストーリーでもかまいません。

たとえば、話し手が1枚のカードを手に、「彼は遠くを眺めてこう言った。『はぁ~なんだかさびしいなあ・・・』」というお話を考えたとします。

他のプレイヤーはそのお話を受け、近いイメージのカードを手元から1枚選びます。全員のカードを誰が出したのかわからないよう裏向きでシャッフルし、場に並べます。

全体に、なんとなくさびしいイメージのカードが揃うことになります。

読み手以外のプレイヤーは、その中から読み手の選んだカードを推測して当てます。読み手は毎回交代し、多く正解した人が勝ちです。

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「はぁ~なんだかさびしいなあ・・・」  正解はどれだろう。1番の窓から外を眺めている子どもか?2番にも寂しい顔をした仮面がある。3番の子は一人旅で寂しいかな? 写真ではわかりにくいが、実は5番の鹿の剥製も涙をながしている。

ヒットマンガでは、カードに書かれた絵を元に「わかりやすいセリフをつくる」ことが目的でしたが、ディクシットは「わかりにくすぎず、わかりやすすぎないお話を作る」ことが目的です。

「わかりにくすぎずわかりやすすぎない」ってどうやって判定するの?と思われるかもしれませんが、とてもスマートなルールの工夫により「お話」がわかりにくすぎずわかりやすぎなかったときだけ、話し手にボーナス得点が入る仕組みになっています。その工夫については買ってみてのお楽しみ。一度プレイすれば「そういうことか!」と感嘆するはずです。

(以下は余談。市販されているアナログゲームは、コマやボードといった物理的な構成物だけでなく、独創的なルールにも商品価値が備わっていると私は考えます。なので、ゲームをご紹介するさいにルールを完全にオープンにするのは、映画のネタバレと同じで商品価値を下げかねないので、極力避けたいと思っています)

互いの距離がグッと縮まるゲーム

ディクシットの素晴らしい点は、一度のプレイで、参加者同士の距離をグッと縮められること。そこには、「カードに描かれた絵をもとにお話を作る」という、このゲームならではのアクションが関係しています。

抽象的な絵を元に自由に考える「お話」には、話し手の個性が色濃く現れます。登場人物の心情を読み取ってセリフを考える人、客観的な状況説明が得意な人、はたまた奇想天外なストーリーを考えだす人・・・。

「お話」に現れてくるそれぞれの話し手の個性が、正解のカードを突き止めるためのヒントになります。

「◯◯さんなら、きっとこんな表現をするはず」

そんな風に相手のこと考えているうち、いつしかお互いの距離が縮まっている。ディクシットはそんなゲームです。

 

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