<追記アリ>放課後等デイサービス運営厳格化!どう対応する?

厚労省方針で放課後等デイサービスの運営が厳格化

新年早々、放課後等デイサービス関係者にとって、大変厳しいニュースが飛び込んできました。

放課後デイ運営厳格化 厚労省方針、不正防止図る(中國新聞)

報酬の不正取得や、質の低い事業所が後を絶たないため、運営に伴う規制を厳格化するという内容です。厳格化の時期は今年4月からと非常に早く、その内容も後述するように大変厳しいものとなっています。

<1/9追記>その後厚労省の有識者部会を経て、新しい情報が出ています。以下、赤字でアップデートされた部分を追記します。

障害児向けデイサービス、開設要件厳しく 厚労省 (日経新聞)

以下、厳格化の内容と、その対応について考えてみたいと思います。

 

①職員の資格要件厳格化

放課後等デイサービスの職員の資格要件厳格化について、以下のように書かれています。

  • 「児童指導員」や保育士、障害福祉経験者の配置を条件とし、職員の半数以上を児童指導員か保育士とする基準も設ける。

ここでいう「児童指導員」の資格要件は下記のようになっています。

  • 地方厚生局長等指定の児童福祉施設職員養成学校を卒業
  • 社会福祉士
  • 精神保健福祉士
  • 学校教育法規定の大学または大学院で社会福祉・心理・教育・社会のいずれかに関する学部・研究科・学科・専攻を卒業
  • 小学校・中学校・高等学校のいずれかの教諭の免許状取得(学校種や教科は不問)
    児童福祉施設での実務経験者(高卒以上2年、その他3年)

これは人材確保、特にパートタイム職員の確保を考えると、かなり厳しい条件です。

多くの放課後等デイでは、パートタイム職員を雇って子どもたちとの関わってもらっていると思います。その主力を担ってきたのが、子育てが一段落した「主婦」と大学で教育学や心理学を学ぶ「学生」でした。上記の厳格化が実施されると、こうした主婦と学生の多くが条件に該当しなくなります。

その結果、こうした人達の中に優秀で意欲のある人材がいても、要件を満たしていないため採用できないことが考えられます。

<1・9追記>

  •  新基準では、事業所に配置する職員を児童指導員や保育士、障害福祉サービスの経験者に限定する。

との日経報道。未経験者の採用はできないという条件が明確になった形です。

 

②「児童発達支援管理責任者」要件の厳格化

各事業所に一人配置することが義務付けられている「児童発達支援管理責任者(児発管)」については、「障害児・者や児童分野での3年以上の経験が必須」とあります。

従来は福祉分野での経験が5年あることが児発管の要件でしたが、この要件に代わる形なのか、両者の条件を同時に満たさなければならないのかは記事中からはわかりません。

いずれにせよ、児発管がいなければ事業所が運営出来ないのですから、①と同じかそれ以上に厳しい条件であると言えるでしょう。

 

 

不正防止やサービス品質向上に繋るかは疑問

こうした職員の資格要件の厳格化は残念ながら、不正防止やサービス品質の向上に繋らないのではないかと私は思っています。

まず報酬を過剰申告するなどの不正は、そもそも経営モラルの問題で、職員の資格要件とは関係ありません。厳格化の内容の中には「運営指針の遵守と自己評価結果の公表も義務付け」とありますが、これも性善説に基づいた対策で、そもそも不正を働いている事業所が「ウチは不正を働いています」という自己評価結果を公表するはずがありません。不正を防ぐには行政が監査に入る回数を増やし、罰則を強化するしか無いと思います。

デイで働く職員の資格要件を厳しくすればサービス品質の向上に繋るという考え方にも疑問が残ります。たしかに、障害児・者と関わった経験がある人は、全くの未経験者に比べればお子さんとの接し方の部分で一日の長があるかもしれません。

しかし、私が複数の事業所を見た経験からすると、デイの質の優劣は、個々の職員の経験より、事業所として子どもの発達段階にあわせた豊富なプログラムを用意できているかどうかに大きく左右されます。放課後等デイサービスには小学生から高校生まで、様々な障害特性を持ったお子さんがやってきます。その子達が毎日安全に楽しく過ごせ、それでいて発達を促せるような豊富なプログラムと、それを実現するために必要な教材を揃え研修を実施したりマニュアルを用意することが一番むずかしいのです。それができないので、上記記事中にもあるように「テレビを見せるだけ」という残念な事になってしまうのです。

これらのことから、今回の厳格化は、不正防止の点でも質の向上という点でも的の中心を外していると言わざるを得ません。

 

提言:「監査強化」と、「”事業所プログラム計画書”の作成と公表」

では、制度レベルでどうすれば放課後等デイサービスの不正防止やサービスの質の向上を果たせるのか、考えてみました。

まず、不正を防ぐには先にのべたように、行政が監査に入る回数を増やし、罰則を強化するしか無いと思います。

第二に、質の向上については、発達段階にあわせたプログラムの用意が肝要だと思います。もっと踏み込んでいえば、プログラムを用意せず単にお子さんをお預かりするだけの放デイは認めない、という方針を明らかにすべきだと思います。

プログラムは必ずしも療育的成果を求めるものでなくともよいのです。しかし、障害のあるお子さんが、集団で安全に楽しく過ごせるためには、無計画であってはいけません。お子さんの発達段階や興味にあわせたアクティビティを設定し、そこにあわせた機材や道具の用意、そしてスタッフ側の事前準備が欠かせないのです。

これを確実におこなうため、各事業所は毎日どんなプログラムを実施するのかを計画書を作成し、これを行政に報告し、一般にも公表するよう義務付けることを提言します。デイの利用を希望する保護者は、その事業所がどんなプログラムを行っているのか、他事業所の計画と比較しながら見られるようにするのです。

そうすれば、1日中「テレビをみる」というプログラムを設定する事業所はないでしょうし、仮にあったとしても誰も利用しようと思わないはずです。

 

放課後等デイサービス経営者・管理者の対応は?

この厳格化が実施された場合、人材確保が今以上に困難になることは確実でしょう。

そこへの対応として、当たり前ですがまずは今いるスタッフが気持ちよく長く働いてくれる環境を作ることが重要だと思います。そうすることで、組織内で児発管や経験のある職員を育てあげていくことが、長い目でみれば最良の人材確保戦略になると思います。

しかし放デイが他の事業と異なるのは、売上上限が決まっているために給与面でのインセンティブを用意しにくい点です。そのため、日々の関わりの中で教室を利用しているお子さんが笑顔で過ごし、成長を感じられることが職員自身にも伝わり、一人の指導者・支援者として自身も成長できているという実感を持てることが、長く働くモティベーションにつながるのではないでしょうか。

つまり、結局のところは事業所が提供するサービスの質を高めることが、職員が長く働くモティベーションを高めることにも繋るのではないかと考えます。

そのきっかけとして、事業所の総力を結集して質の高いプログラムを作り、先に制度面での提言で挙げた「事業所プログラムの公表」をまずは事業所レベルで率先して行うことをご提案したいと思います。

質の高いプログラムを実施しているというブランドが地域で確立できれば、その事業所は利用者だけでなく、職員候補者にとっても魅力的に映るはず。人材確保の困難も克服できるのではないかと思います。

 

今後の講演予定:

 

1/14(土) すごろくや 学童編② 満席になりました

1月15日(日) 静岡 『中高生〜大人編 就労に必要なコミュニケーション力を身につける』

2月19日(日) 「ゲーム療育講座:就労訓練編」 東京高円寺 すごろくや

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