「数を数える」雲の上のユニコーン
「雲の上のユニコーン」は、アナログゲーム療育においては、主に幼児のお子さんに1から3までの数を数える練習をする目的で設定することが多いゲームです。
ADHDの診断のあるお子さんが、最初サイコロの目を無視して駒を進めてしまったり宝石を大量に取ってしまっていたのを、ゲームを通じて数える練習をしたことで、そうした問題がなくなりスムーズにプレイできるようなったエピソードは、書籍や研修でしばしば紹介してきました。
ただプレイさせればよいわけではない
一つ強調しておきたいことは、ただこのゲームをプレイさせるだけで自然に数が数えられるようになるわけではない、ということです。
動画をみてもわかるように、数の数え方は、ゲームのプレイそのものとは別に、大人が教えています。
この場合、ゲームの役割は、お子さんが数を数えるきっかけを作ることにあります。
お子さんがそのゲームをプレイしたい、あるいは勝ちたいから、数を数えようとする。大人がそこをサポートするわけです。
先に紹介したお子さんが、もし大人の介入なく子どもだけで「雲の上のユニコーン」を遊んだとしたらどうなるでしょう。
ルール通りに駒を進めたり宝石を取れない結果、その子が他の子たちから仲間外れにされてしまうのは目に見えています。
大人が入ることが必要
アナログゲーム療育は子どもだけでゲームをプレイするのではなく、そこに大人が入って、子どもたちだけでは困難な「ルールの守り合い」をサポートする点が特徴です。そうすることによって、お子さんはトラブルなく安心してゲームをプレイできるだけでなく、その過程で他のゲームや遊びにも生かせるようなスキル(今回は数を数えること)を得ていき、さらには「他の子とルールを守り合って楽しく遊べる自分」という肯定的な自己イメージをも育んでいくことができるのです。
一般論として、大人の介入がなくとも子どもたちが子ども同士の遊びを通じて発達していくことは事実だと思います。他方で、子どもだけの遊びの輪にうまく入れず、そのままでは他者と関わりながら発達していく機会を奪われているお子さん(そして大人)が少なからずいることも、これまでの活動を通じてわかってきました。同時に、そうした人たちも、適切なゲーム選びと介入があれば、他者とルールの守り合いながら楽しんで遊べることもわかってきました。
このコラムでは引き続き、こうした「子どもが他者とルールの守り合いながら楽しむための大人の支援技術」をお伝えしていこうと思います。